春はなにかとイベントやビジネスで忙しい季節。
・卒業祝い、入学祝い。
・就職や転勤の挨拶。
・お花見の案内。
こうした手紙や案内状を書く機会も多いのではないでしょうか。
さて気になるのが時候の挨拶の書き方。
いざ時候の挨拶を書くとなると、どう書いてよいのやら。
知らずにイメージだけで書いてしまうと、恥をかいてしまうこともあります。
そこで、春に使える時候の挨拶についてご紹介します。
今回は、春の漢語調の時候のあいさつをテーマにします。
これだけをおさえていれば、恥をかくことはありません。
目次
コツは二十四節気で季節を考えること
時候の挨拶を考える場合には、「二十四節気(にじゅうしせっき)」で季節を考えることが大切です。
二十四節気とは、古代中国で作られた太陰太陽暦に24つの月名をつけたものです。
年ごとに気候と月日にずれがあるので、二十四節気ではより正確に季節を表すために二十四の区間に区切られています。
そのため、新暦では3月、4月、5月を春と呼ぶのですが、二十四節気ではだいたい2月、3月、4月を春と呼びます。
より正確に言うと、立春から立夏の前日までが二十四節気の春なのです。
二十四節気の春は、6種類の期間に区切られています。
その節目の日取りが、立春(りっしゅん)、雨水(うすい)、啓蟄(けいちつ)、春分(しゅんぶん)、清明(せいめい)、穀雨(こくう)と呼ばれる日です。
2017年は、次のような日取りになっています。
初春:立春から啓蟄の前日 (2017年は2月04日から3月04日) |
立春:2017年は2月04日 |
雨水:2017年は2月18日 | |
仲春:啓蟄から清明の前日 (2017年は3月05日から4月3日) |
啓蟄:2017年は3月05日 |
春分:2017年は3月20日 | |
晩春:春分から立夏の前日 (2017年は4月04日から5月4日) |
清明:4月04日 |
穀雨:4月20日 |
これらの日取りは、年によって1日程度の違いがありますが、毎年ほぼ同じです。
夏になったことを表す日は、立夏と呼ばれます。
2017年の立夏は5月5日ですので、「立春の2月4日から立夏の前日である5月4日まで」が春なのです。
立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨で表される期間は、おおまかに初春、仲春、晩春の3つの期間で呼ばれることもあります。
(それぞれ孟春、仲陽、季春の別名もあります。)
つまり、表に示すように、まず立春から啓蟄の前日までが初春になります(2017年は2月4日から3月4日まで)。
つづいて、啓蟄から清明の前日までが仲春(2017年は3月5日から4月3日まで)です。
最後に、清明から立夏の前日までが晩春です(2017年は4月4日から5月4日まで)。
挨拶文の例
今回は、漢語調の挨拶から解説します。
(口語調の挨拶は、また別の機会に解説します。)
時候の挨拶では、時節を表すため、二十四節気のあとに「候」をつけます。
「初春の候」というふうに書きます。
書き出しとして、「頭語」、「時候」、「相手の安否や状態への気遣い」を書きましょう。
そのあとに話題を変えるようにして本文を書いてください。
挨拶の一例ですが、たとえば今日が初春なら、
拝啓 立春の候 皆様にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて 私こと
このたびは○○に着任する運びとなりました。
今後ともご指導賜りますようよろしくお願い申し上げます。
略儀ながら書状をもってご挨拶とさせていただきます。
敬 具
平成二十九年三月
山本太郎
のように書きます。最後は敬具などの結語で結んで、日付と氏名を書きましょう。
「拝啓」や「○○の候」のうしろには、句読点「、」ではなく空白を使うとフォーマルです。
本文中でも、句読点ではなく空白を使うとより丁寧です。
句点「。」を省くと、さらにフォーマルになります。
結語も、「敬 具」のように敬具の間を一文字分あけると、よりエレガントで丁寧な書き方になります。
「候」の読み方は?
「候」は「こう」と読みます。
「候」は、気候、時候など、季節がらを表す言葉に用いられます。
時候の挨拶ですので、時候の候と覚えましょう。
「そうろう」と読むと恥をかいてしまいますので、注意してください。
「候」のほかに、「みぎり」も使われる
むかしの女性は、候の代わりに「砌(みぎり)」を使っていたこともあります。
「初春のみぎり」と書いてもよいでしょう。やわらかい印象になります。
親しい間柄なら、「折」でもよいでしょう。
「さて 私こと」というのは、「私事ではありますが・・・」という意味で、必ず必要なものではありません。挨拶の後に入れるとよいでしょう。
これの応用で、
拝啓 仲春の候 貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます
平素は格別のお引立てを賜り誠に厚くお礼申し上げます
このたびは○○に事務所を移転することとなりました
つきましては今後とも一層のご支援を賜りますよう
心よりお願い申し上げます
敬 具
平成二十九年三月
山本太郎
のように、ビジネス文書にも使うことができます。
時候の挨拶のバリエーション
漢語調の時候の挨拶では、ほかにも様々なバリエーションの時候の挨拶を使うことができます。
おおまかな目安ですが、2月、3月、4月は次のような挨拶が使えます。
2月
立春の候、向春の候、余寒の候、残寒の候、春寒の候、残雪の候、
解氷の候、梅花の候、上春の候、春浅の候、梅鴬の候、紅梅の候
3月
浅春の候、早春の候、季春の候、春分の候、春色の候、春暖の候、
麗日の候、軽暖の候、春雨の候、若草の候、春風の候、仰梅の候
4月
陽春の候、春暖の候、仲春の候、春暖の候、春和の候、春日の候、
温暖の候、陽春の候、春陽の候、桜花の候、春粧の候、桜花爛漫の候、
春風駘蕩の候、春宵一刻千金の候
言葉のニュアンスを大切に
大切なことは、二十四節気を意識して、季節の移り変わりを感じながら書くことです。
たとえば、2月上旬の立春を過ぎた日から「余寒の候」「残寒の候」を使えますが、2月末でもまだまだ寒さが残っていれば使っても不自然ではありません。
二十四節気の「立春」の前は「大寒」です。大寒の寒さがまだ残っていると感じられる場合は、余寒、残寒を使うとよいでしょう。
また、3月だからといって、まだかなり寒いのに軽暖の候を使ったり、すっかり春らしくなって暖かくなっているのに浅春の候を使ったりすると不自然にみえます。
そのあたりのニュアンスがむずかしい方は、初春、仲春、晩春の時期を確認して「初春の候」「仲春の候」「晩春の候」と書けばまず間違えることはありません。
相手の地域の気候に合わせる
自分の地域で桜が咲いているからといって、手紙を出す相手の地域がまだ桜が咲いていない場合には、「桜花の候」は使わないほうがよいでしょう。
まだこっちは咲いてないのにな・・・と独りよがりな印象を与えてしまいかねません。
季節感を大切にするとともに、相手の立場にたって書いてみてください。
「やっぱり時候のあいさつは書きたくない!」という方のために
ややこしくて時候の挨拶を書きたくないというひとは、時下(じか)を使いましょう。
時下(じか)を使うと、時候を省くことができます。
拝啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます
時候の挨拶がわずらわしい場合には、こんなふうにして省略してしまいましょう。
立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨のそれぞれの意味
立春 | その名前のとおり、二十四節気の春の始まりです。 |
雨水 | 雪が降ることをやめて雨になり、降り積もっていた雪もとうとう水になる、という意味合いがあります。素敵な言葉ですね。 |
啓蟄 | 暖かくなってきたことで、大地に眠っていた蟄(蛇や蛙)が、冬篭りの穴を啓いて出てくるという意味合いがあります。動物たちが顔を出し、活動を始めるころです。 |
春分 | まさしく春分の日です。春の彼岸にあたり、昼と夜の長さがほぼ同じになる日です。 この日からだんだん暖かくなってきます。 |
清明 | 清浄明潔に由来した名前です。すべてのものが清らかになっている、春らしい日です。 |
穀雨 | 農作物が、雨に恵まれる日という意味合いがあります。春の暖かさと、雨の恵みで穀物がよく育ちます。 |
まとめ
今回は、漢語調の時候の挨拶の書き方についてご紹介しました。
季節感を大切にすることが大切です。
二十四節気を意識すれば、それほどむずかしいものではなく、気軽に使うことができます。
口語調の挨拶の書き方については、また別の機会に。